皆さん、こんにちは。『中国法務の扉』へのご訪問ありがとうございます。名古屋の弁護士岡部真記です。各地で大雨が続いています。気を付けてお過ごしくださいね。
さて、皆さんは裁判の傍聴に行かれた経験はありますか?特に民事訴訟は…つまらないですよね。「何をやっているか分からなかった」といわれることがとても多いです。
「(書面が)提出されましたな」と確認し合い(弁護士がついているときは事前にFAXで送っています)、「次回は~~について反論してください。よいですな?」と裁判官に言われ、「承知しました」といい、「期日は〇月〇日〇時からはいかがか?」、「差支えです」「結構です」・・というやり取りが、基本の台本。10分かからずに裁判期日が終わるということも少なくありません。
最近は、形式的なやり取りが問題視され、裁判官から積極的に書面の内容について説明を求められたり方針や考え方について口頭で説明したりすることも増えてきました。また、電話会議の利用も進んでいました。
そして、いよいよIT化(民事訴訟においてウェブ会議等を活用した争点整理の新たな運用(フェーズ1))を試行的に始めよう…!!
というときにコロナ禍、緊急事態宣言…。
今では試行的ではなく当然のようにWEB会議(ZoomではなくTeamsが使われています)を利用した裁判期日が行われるようになっています(名古屋の場合)。しかし、このWEB会議システム。現行の法律の「解釈」で実施されており、ITを利用するための法改正が行われたわけではありません。このため、色々な制約があります。原本をお互い確認し、証拠を正式に提出するなどの手続きができませんし、書面や証拠がオンラインでアップロード(提出)できるわけでもありません(相変わらずFAX)。
結局、オンラインで会議ができる+αにとどまっています。
法務省は2022年に改正案を国会に提出し、25年度の本格運用開始を目指すと報道されています。
どうなるのか楽しみです。
他方、中国では、2021年6月16日に中国最高人民法院『人民法院オンライン訴訟規則/人民法院在线诉讼规则』2021年8月1日施行)が公布されました。
会議部分だけではなく、裁判の全過程(立件、調解、証拠交換、法定尋問、開廷審理、送達等)の全部又は一部のプロセスをプラットフォーム上で完了させることができ、その効力は、裁判所に出頭して行われる訴訟活動と同等の法的効力を有するとされています(1条2項)。
また、訴状や答弁書、反訴上当の訴訟文書を直接プラットフォームに入力して提出したり、オフラインの訴訟文書や証拠資料を電子化したうえで、アップロードして提出したりすることができるとの規定もあります(11条~13条)。
コロナ禍もあり、従前も限定的にオンライン裁判は行われていたようですが、今月から人民法院オンライン訴訟規則が施行されることで、また様子が変わってくるのかもしれません。
変化のスピードが尋常ではない中国。もしかすると1年後には、「日本の弁護士ってまだ裁判所に行っているの?」と驚かれるくらいに全面オンライン化されているかもしれません。
ずいぶん前から検討されてきたものの、実現する予感が全くしなかった日本の裁判のデジタル化(といっても日本ではWEB会議)がここまで進んだのは、コロナ禍がもたらしたプラスの面だと思います。今までは、裁判所の徒歩圏内(最低でも自転車圏内)に事務所があることが必須要件でしたが(名古屋の法律事務所の大半が名古屋駅ではなく、丸の内・久屋大通に集結しているのはこのためです)、そのうちこの文化も変わっていくかもしれません。
全くの余談ですが、アメリカテキサス州のオンライン裁判で「猫」になってしまった弁護士の画像がニュースで話題のようですね(「オンライン裁判」で検索しようとしたら、「オンライン裁判 猫」が検索候補に出て??となり、つい見てしまいました)。まるで猫がしゃべっているかのようなフィルター設定。裁判の相手方がこの状態で現れたらさすがに笑ってしまいそうです。
それでは皆様、今週も元気にごきげんにお過ごしください。
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