みなさんこんにちは。今週も『中国法務の扉』へのご訪問、ありがとうございます。
雨多いですね…、梅雨入りです。
今週は、出発時点でギリギリ雨が降っていなかったので、思い切って自転車に乗ったところ、途中でずぶ濡れになり、大変なことになった日がありました。恥ずかしいし、前は見えないし、髪の毛はクルクルだし…あまりに無様で笑えてきました。
もしかして皆さんの頭の中には素敵なドラマのワンシーンが片隅にあって、「弁護士はクールな車に乗ってサッと登場する」イメージがあるかもしれませんが…、名古屋の弁護士は、みんな「自転車」に乗っています。もちろん私も颯爽と自転車を乗りこなしています。そして、私の自転車技術は日々目覚ましい進歩を遂げています。だいぶ大人になっても、コケたりしていましたが(㊙)、もう大丈夫です。しかし、梅雨はいけません。時間に余裕をもって、このウォーキング強化月間をやり過ごしていきたいと思います。
さて、最近スタートアップの経営者様のご相談を受けたり、知り合ったりする機会が以前より増えました。そんなスタートアップが一番「絶対納得できへんわ!!」と怒りに震える取引や契約って何だと思いますか?
怒りに震える第一位(実際は「(取引や契約で生じた)納得できない行為」という表現です)、それは…
NDA(秘密保持契約)に関すること(約31%)、なんだそうです。
ちなみに第二位は出資契約に関すること(約27%)、第三位は「ライセンス契約に関すること」(約23%)。
これは、公正取引委員会が「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書(令和2年11月)」で報告している調査結果の一つなのですが、この報告書、なかなか面白い。大企業や投資家とうまく付き合っていかなければならないスタートアップのジレンマや悔しさが行間から伝わってきます。そして、これを踏まえた指針(「スタートアップとの事業連携に関する指針」)が今年3月29日に出ています(公正取引員会・経済産業省)。
NDA(秘密保持契約)は、製造や技術系の会社なら一番よく見る、そして締結する契約書ではないかと思います。だいたいパターンも決まっていますし、「どうせNDA意味ないし」、「ま、こんなもんかな」と思って、いつもと大体同じだからOKと契約している中小企業・スタートアップも多いと思います。
しかし本当はそれではいけません。
初期の段階で最も大切なのは、そのビジネスでの行き交う「情報」が何なのかをしっかり理解すること。
法務担当者から電話がかかってきてどんな取引なのか質問すると、情報の受領者側なのか提供者側なのか分かっていない場合が少なくありません。それでは、契約書のチェックはできないはず。
しっかり聞き取りをして下さい。
そして、指針でも指摘されている通り、
①NDAなしで開示できる情報
②NDA締結後に開示できる情報
③いかなる状況であっても開示するべきではない情報
に区別しておくことも必要です。
報告書には、大企業側からの意見として「初期の情報交換の時点から、NDAを要求してくるスタートアップがいる。大企業としては、スタートアップの技術概要が全く分からない段階でNDAを要求されると、事業連携に向けた議論がしにくくなる場合がある。」というコメントが掲載されており、普段中小企業のご相談を受けることが多い立場からすると、「ムムッ!!(というかムカッ!)」と思うところですが、スタートアップ自身が①②の区別を意識できていない場合は、真面目に取り合う話かどうかを大企業として図りかねるということなのかもしれません。
スタートアップは誰と組むかで進路に大きな違いが出ます。まずは冷静に自分の情報を整理しましょう。
ちなみに中国の秘密保持契約自体は日本の秘密保持契約はそんなに違いはないように思います。中国では最近模倣品の取り締まりを以前と比べてかなり厳しく実施していると聞きます。しかし、漏洩のリスクをどのように減らしていくのかはなお課題であり、契約書の規定だけでは限界があるように思います。監査/検査権をしっかり明記するのはもちろん、実際に抜き打ちで監査や検査をしたり、定期的に問い合わせしたりして秘密情報の管理状況を把握するなどの実務的な努力も重要だと考えます。往来の難しいコロナ禍ではこういう面でも、難しさがありますね…。
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また、セミナーも是非ご確認ください。先日お会いした経営者は、「こういうの勉強しようと全く思わなくなった」とおっしゃっていましたが、トップが法律を学びコンプライアンスを守ろうとする姿勢は従業員の士気を上げます。ご自身は忙しくても、適切な人に学ばせ、会社で共有するという習慣を是非作ってください。会社がバージョンアップされます。
それでは皆様、今週も元気に、ごきげんに!