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「不公平」かもしれないクリスマスプレゼントのお話と契約書の末尾のお話

『中国法務の扉』へのご訪問、ありがとうございます。名古屋の弁護士、岡部真記です。

 

今日(昨日!)はクリスマスでした!!今年は、とてもとても素敵なプレゼントを頂きました(うれし過ぎて泣きました)。どうして感動するのか考えていたら、長い間ずっともやもやしていたことの答えが分かった気がしたので、備忘のために作文(!?)を書き(「不公平」かもしれないクリスマスプレゼント)、その勢いでnoteデビューすることにしました(無計画…!使い方はよくわかっておりません)。

「公平」とか「平等」については色々と思うことがあります。年末年始お時間ある方はお読みいただき、「いいね」やご感想を頂ければうれしいです。

 

さて、最近あまり法律の話をしていないので、少しだけ。だんだんと、どのテーマについて今まで何を書いたのか分からなくなっておりますが、今日は契約書の署名・記名押印欄について書いてみようと思います(印鑑話パート②)。

 

既にご案内の通り、最近「脱ハンコ!!」の勢いが止まりませんので、今後どうなっていくのか注意はしなければなりませんが、一般的な日本の契約書の場合、契約書の末尾に「本合意を証するため、本書●通を作成し、各自記名押印の上、各1通を保有する。」のような決まり文句が入っています。会社の場合は記名と押印、個人の場合は、署名と押印を習慣的にしているかと思いますが、法律では、「署名又は記名押印」という記載になっているのが一般的です。契約書の末尾については、「印鑑こそが重要なんですよ」と言われたり、最近は逆に「署名とか押印とか実はあんまり意味がないんですよ…」とか言われたり混乱されていると思いますが、電子契約は少しおいておくとして、こんな感じになっています。

①契約は意思表示だけで成立する(民法の基本の考え方です)→②でも意思表示って、あとから証明できないよね?→③書面にしておこう→④誰と誰との約束か分からないといけないよね?署名しよう。会社の場合は、記名押印でいいよね。→⑤日本は昔から印鑑って特別な意味があるでしょ。署名は誰が書いたかを立証するが難しいし…印鑑が押してある書面には特別の効力を認めよう(二段の推定・民事訴訟法2284項)→⑥そんなわけで押印は大事なんですよ→⑦印鑑の中でも実印は大事だから、実印で押してもらって、しかも印鑑証明書も出してもらっていれば、誰の印鑑かはっきりするし安心です。→⑦いやでも、そもそも意思表示があれば契約は成立するわけで…このコロナ禍において…(一周回って(!)、脱ハンコの話に流れていきます)

 

この民事訴訟法2284項のところで論じられる【二段の推定】というテーマは、だいたい複雑な説明になり、一度聞いただけで「なるほど!!」とはならないと思うのですが、(誤解を恐れず)ものすごくおおざっぱに言うと、Aさんのハンコが押されていたら、Aさんが「自分の意思で押した」はず…ですよね!(推定①)、Aさんが自分の意思で押したということは…この契約書はちゃんと作られたということになるはずですよね!(推定②)という話です。押印を求められる時、「三文判はやめてください」と言われることがあると思うのですが、偽造されやすいということ以外に、「自分の意思で印鑑を押すぞ!」という重みがない(=推定するのが難しくなる)ためよろしくないのだろうと思います。この状況で、この種類のハンコのこの押され方!…ということは…という「みんなの共通認識」があって初めて「推定①」という話になるわけです。。

 

中国はどうかといいますと、ハンコ文化はあるので(以前書いたように印鑑証明書はないとのこと)、契約書でもハンコを見かけます。何となく…日本の印鑑よりサイズが大きいものが多いような気がしますが、一般的にはどうなんでしょう…(たまたま見たハンコの印象が強いだけでしょうか)。既にご案内済みの気がしますが、中国民法典でも、書面契約において、署名した時、押印、拇印した時に契約が成立するという規定があります(490条)。日本と大差ありません。ただ、末尾の記載は、日本の契約書よりバラエティに富んでいるような印象をもっています。会社の印鑑が1つだけそっと押されているもの、契約書の記載は会社が主体だけれど、法定代表者?!(検証不可能)の拇印だけが押されているもの(なんだか少し怖い感じがしました‥)、個人名の署名だけ記載されたものなどを見たことがあります。末尾の記載自体が争点になっている紛争はまだ経験したことがありませんが、潜在的には紛争となる可能性があるところですので、会社の名前、公印、法定代表者の署名、を全部そろえてもらうのが安心です。

 

弁護士は契約書を自ら締結する場面が非常に少なく、末尾が空欄のまま仕事が終わってしまうことがほとんどなのですが、会社、法務のみなさんは、完全脱ハンコまで、まだまだ目を光らせるようにしていてください。取引期間が長いと、契約書自体が見当たらなということもしばしば起こります(だいたいは「絶対あるんですど…一元的な管理はできていなくて…」という状況)。やる気のみなぎっている年始のうちに、今までの契約書を探し出し、まとめて整理してスッキリさせるのもよいのではないでしょうか。

 

今年は本日が最後です。88日から4か月。お付き合いありがとうございました。守秘義務があるためなかなか具体的な話が書けず歯がゆいところもありますが、引き続きゆっくりこのサイトを育てていければと思っておりますので、来年度もご覧いただけると嬉しいです。

 

よいお年を!!