昨日、中国法務セミナー第2回『紛争・コンプライアンス【知識編】』を終えた岡部です。喉がガラガラ…「全エネルギー」を投入しました(がんばっています!)。しかし、まだまだ反省が。我ながらもうちょっとオモシロおかしく話せないものか…
さて、3日前、こんなタイトルのネットニュースを目にしました。みなさん、ご覧になりましたか(色々なニュースに出ていました)?
『出頭応じず書類送検 民事執行法改正、全国初の検挙 /神奈川』(毎日新聞WEB:https://mainichi.jp/articles/20201021/ddl/k14/040/056000c)
民事執行法違反!!ってなに?と思われた方もいらっしゃると思いますが(弁護士の方も知らない方いらっしゃるはず!)、これは、今年4月1日に施行された改正民事執行法にまつわるとてもホットなニュースなのです!!
今回は、この(比較的新しい)改正民事執行法とこのニュースの意味をご紹介したいと思うのですが、せっかくなので、この半年間この新しい民事執行法を研究し、実践を続けている当事務所の石井大輔弁護士に対談形式で参加してもらうことにしました(石井弁護士、目を輝かせて語ってくれてありがとう!!)。
それでは早速はじめてみます。
岡部:弁護士がつらいのは、せっかく裁判で勝訴しても執行できないときですよね?債務者の財産を見つけるのは本当に難しい。今までも財産開示手続(債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続です。債務者は財産開示期日に裁判所に出頭し、債務者の財産状況を陳述する必要があります)はありましたが、送検されるなんて聞いたことがなかったですよね。驚きのニュースでしたね?
石井弁:はい、民事執行法が改正されて、初めてのケースとのことです。今までも財産開示制度はあり、正当な理由なく裁判所に出頭しない場合や虚偽の陳述をすると「過料」の制裁がありました。しかし「過料」は刑罰ではなく重みが全然ありません。今回の改正で、制裁としての罰則は「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」に強化されました。
岡部:懲役まであるとなると、債務者も簡単には無視できないという気持ちになるでしょうね。送検されたケースの報道がなされて、今判決や公正証書で決めた約束を無視し続けている債務者はちょっと真面目に対応しなければという気持ちになったのではないでしょうか。送検後どういう処分になるのかがポイントですね?
石井弁:そうです。起訴猶予になるのか、それとも罰金刑にまでなるのか、注目しています。起訴猶予になるのであれば、債務者が自己の資産について正しい陳述をするまで財産開示の申立を重ねて行うことになろうかと思います。ちなみに、同じ時期に改正され導入された第三者からの情報取得手続(「情報取得手続」)も注目の制度です。
岡部:情報取得手続は、債務者の財産に関する情報を債務者以外の第三者から提供してもらう手続ですよね?今までは、弁護士法23条の2に基づく照会(弁護士の申請を受けて、弁護士会が官公庁や企業、事業所などに事実を問い合わせる照会を行ってくれる制度、以下「弁護士会照会」)を利用して、銀行などに問合せし、債務者の財産を調査してきましたが、弁護士会照会とこの情報取得手続きはどこが一番違いますか?費用?
石井弁:一番はスピード感ですね。弁護士会照会は回答が返ってくるまでかなり時間がかかったり、回答拒否されるということもありました。情報取得手続では銀行などは確実に口座があるか否かを回答してくれますし、何より情報提出命令が届いてから2、3日で回答する銀行が多い印象です。費用も弁護士会照会より1件1000円くらい安いです(*件数や弁護士会照会を行う弁護士会にもよる)。
岡部:大体の手続きの流れですが、まず大前提として判決や和解調書、調停調書、公正証書等の執行力ある債務名義の正本が必要ですね?それ以外にも財産調査の結果を報告しなければならないですよね?1度は強制執行して、その結果財産を発見できなかったなどの報告が必要ということでよいですか?
石井弁:そうです。財産調査報告書をきちんと作成しなければなりません。強制執行をしたけれどだめだった、というのが典型的ですが、全く資産がわからないということであれば、その旨を財産調査報告書で説明することでも対応可能です。
岡部:そのあと、予納金を収めると命令が出され、第三者(銀行など)に裁判所が回答を依頼する、と…。
石井弁:その通りです。2、3日で回答が来る場合が多いです。幸運にも預金口座が見つかった場合には、情報取得手続がされたことを債務者が裁判所の通知から確認する前に強制執行を行います(銀行からの回答から約1カ月後)。残念ながら、銀行からの回答で預金口座を見つけることができなかった場合には、財産開示手続等に切り替えて更に財産調査を進めていくことになります。財産開示手続においても財産調査報告書を作成する必要がありますが、情報取得手続で作成したものをベースに作成すればOKです。
岡部:なるほど。判決をとったり公正証書を作ったたりしたのに回収できていない方には朗報ですね。
石井弁:はい。債務者の『逃げ得』は許さない、という社会の大きな流れを感じます!!!(熱量多めの石井弁護士)
ということで、至極真面目に対談?してみました。
養育費を決めたのに払ってもらえなかったり、売掛金を回収できるという判決を取得したのに結局払ってもらえなかったり…ということは残念ながらよくあります。今後改正民事執行法どのように運用されていくのか、注視したいと思います。
番外編はいかがでしたでしょうか?少々長くなってしまいましたが私自身がとても楽しかったので、好評ならば(!)また企画したいと思います。また感想を教えてくださいね。それではまた来週の金曜日!