ウェビナーの舞台裏と現地法人がマスクを集めた意味

 

こんにちは。『中国法務の扉』へのご訪問、ありがとうございます。弁護士岡部真記です。

 



 

今日の名古屋は雪がちらつく寒さでした。昨日、中国語のオンラインレッスンで先生(@中国の東北地方)が「雪が降ってものすごく寒い!!」と言っていましたが、また寒波が来ているようですね。皆様気を付けてお過ごしください。

 

 

 

 さて、昨日は従前からご案内しておりました、愛知県弁護士会国際委員会主催の中国法セミナー開催日でした。私も、ファシリテーターとして参加させて頂きました。最初は緊張しましたが、だんだん楽しくなり、最終的には「時間を気にせず(タイムキープが私の重要なお役目でした)、もっとだらだらと座談会みたいな企画も楽しそう!」という新たな目論見を抱きながら終わりました。

 

 

 

実はこのセミナー、最後までちゃんと進行するため、技術的な準備(!)に弁護士4人と愛知県弁護士会の事務の方で相当時間をかけました(複雑過ぎて結局最後はついていけなくなりましたが)。会場オンラインで別の場所と中継会場に戻し、その後講演パネルディスカッションで遠方と会場をつなぐその間パワーポイントを出し、阿吽の呼吸で操作してもらう、みたいな流れをZoomウェビナーで行ったのですが、ひとつ画像を出すと別の画像が消えたり、音声が出たりで出なかったり。試行錯誤を繰り返し(技術スタッフさんが重宝される意味がよくわかりました)、何度もZoomウェビナー操作を予行演習しました。その苦労を共有したせいか、何とも言えない一体感が生まれ、時間通り最後まで終えることができたときには謎の高揚感に包まれました(笑)。

 

 

 

今回のセミナーのテーマは、『中国ビジネスに取り組む企業のための、新型コロナ影響下の人事・労務に関する法律問題』で、パネルディスカッションは日本法下の場合と中国法下の場合を比較しながら進めました。中国のコロナ関連の法律・規定については、以前自分でも少し調べたことがあるのですが、中国律師の先生のお話を聞きながら改めて、中国の法律・通達はすごく細かいところまで決めているのだな(しかし地方で差がある)、労働者の保護の姿勢が明確だなと思いました。例えば、人社庁が出している『人力源社会保障部关于妥善理新型冠状病毒感染的肺炎疫情防控期间劳动关系问题的通知』には、コロナ患者や濃厚接触者が治療や隔離で労働することができない期間も雇用主は報酬を支払わなければならず、労働契約の解除ができないこと、その間に労働契約が期間満了したときの取り扱いなどが明文で規定されています。

 

 

 

そして私が今回、一番目からうろこだったのが「使用者は、労働者に対し、国家規定に適する労働安全衛生条件および必要な労働保護具を提供しなければならず」という中国労働法第54条の条文でした。去年の2月、3月頃、中国ではマスク不足が深刻で、日本からもたくさんマスクを持っていく/送るという動きがありました(その後、日本がマスク不足とトイレットペーパー不足、さらには消毒液不足等に悩まされたのは記憶に新しいと思います)。当時、中国現地法人では、従業員のマスクの確保が至上命題であると聞いていたのですが、「(マスク着用義務があるとは聞いたが)どうしてそこまで必死に会社が従業員のためにマスクの準備をしなければならないのだろうか??」とあまりピンと来ていなかったのですが、使用者は労働者に対して労働防護具を提供しなければいけない義務がそもそも明文で法律に規定されていて、この労働防護具=マスクだったのかスタートがここだったのかと初めて結びつきました。なんとなく「労働防護具」は、高所作業や危険作業の時のイメージだったので、事務スタッフのマスク=労働防護具ということがリンクしていなかったことに気がつきました。確かにコロナが蔓延している職場は高所や工事に劣らぬかそれ以上の危険ですね

 



 

コロナ禍で営業自体ができなくなっている事業者の皆さんはもちろんですが、突然、時差通勤やテレワークを導入することになった業者の皆様も、大変苦労されていることと思います。普段は時間をかけて十二分に検討し、計画をたててから実施に踏み切るようなことを次々と実践していくわけですから不安で仕方ないかと思いますが、「走りながら考える」という中国方式に慣れ、中国ビジネスの感覚を体感される機会ととらえていただくのも(強引ですが!)よいかもしれません。

 

 

 

 それでは、また来週、元気にお会いしましょう!